笑み
いつも貴方は綺麗な笑顔を向けてくれる
けれどその笑顔は私だけに与えてくれる物ではないの
常に顔に貼付けたような笑み
ねぇ弁慶さん、私も『みんな』と同じなの?
特別だって言ってくれたのは、『神子として』だったんですか…?
「…と考えてました」
誰も居ないと思った部屋で思案に明け暮れていたら、後ろから弁慶さんに話しかけられた
しかも暗い表情だったと。
何を考えていたのかと。
僕では助けになりませんかと。
あぁ。貴方にそんな顔で心配をされては私、隠せません…
話してしまった
気持ちを自分からバラしてしまったのを途中で気付いたけれど、やめなかった
だって気持ちは知っていて欲しかったから…
でも恥ずかしいから下を向いていた
きゅっとスカートを握って、幼い子みたいだって思われるなってぼんやり考えることしかできなかった
…そしたら弁慶さんは
「…望美さん」
「はい…」
「僕…」
なかなか続かない言葉を不思議に思って静かに顔を上げる私
それに被せるように弁慶さんは
小さな声でこう言った
「……嬉しいです」
その笑顔は、私以外誰も見たこともないと確信できた
だって、照れた表情を隠さずに、薄く赤くなった頬と眉を困ったように軽く曲げて
くしゃっと笑う、大好きな貴方の笑顔だったから…
私の前では偽りの表情をしないでほしい 一種の独占欲
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